こうじさん

こうじさんとの出会いは、数年前にさかのぼります。

昭和という時代を駆け抜け、「24時間戦えますか」と言われた時代を、本当に全力で生きてこられた方です。仕事に情熱を注ぎ、責任を背負いながら走り続ける一方で、人生の中では、たくさんの思いがけない別れも経験されました。

気づけば、心も体も少しずつ健康を損ない、喘息や整形外科的な疾患によるしびれや痛み、動きにくさを抱えながら暮らす毎日。療養生活に入ることは、きっと簡単に受け入れられることではなかったと思います。

それでもこうじさんは、

「このままでは終わりたくない。」
「自分の力で生活を立て直したい。」

そんな思いを胸に、スタイル訪問看護ステーションへつながってくださいました。

夜を越える力を、一緒に育てる

私たちは、訪問看護やリハビリを通して、こうじさんの生活を支え始めました。しかし、体調への不安は決して小さくありませんでした。

「夜が怖い。」

そんな思いから、一度は24時間対応の訪問看護ステーションへ変更されることになりました。

私たちは24時間対応ではありません。だからこそ、「夜をどう乗り越えるか」ということを、ご本人と一緒に考え続けてきました。

頓服薬を手の届く場所に準備すること。 夜に症状が悪化する前に、日中のうちに受診すること。 「しんどくなってから」ではなく、「しんどくなる前」に動くこと。

社会が動いている昼間の時間を上手に使いながら、自分自身で夜を越え、安心して朝を迎えられるよう、一つひとつ工夫を積み重ねてきました。

その積み重ねが、こうじさん自身の力になっていったのです。

「やっぱりスタイルを使いたい」

訪問看護師との交換日記

約一年後。 こうじさんは再び、スタイルへ戻ってきてくださいました。

「どうして戻ってきてくださったんですか?」

そう尋ねると、 「看護師さんたちが可愛らしいからだよ。」 と、いつもの笑顔とユーモアで答えてくださいます(笑)

もちろん、それも嬉しい理由です。けれど私たちは、それだけではないような気がしています。

交換日記を書きながら、お互いのことを少しずつ知っていく時間。
何気ない雑談を重ねる時間。
病気の話だけではなく、仕事の話、家族の話、出会いや別れの話、人生の話をする時間。

そんな積み重ねの中で生まれた「つながり」という目には見えない安心が、夜を越え、朝を迎える力につながっているのではないかと感じています。

苦労を重ねた分だけ、人は魅力を増していく

こうじさんは、まだまだお若い方です。だから私たちは、これから先の人生の物語も、まだまだ聞かせていただきたいと思っています。

たくさんの出会いと別れを経験し、思うようにならない病気とも向き合いながら生きてこられたこうじさん。その姿を見ていると、体は年齢とともに変化し、病気が増えていくことがあるとしても、人としての魅力は、苦労を重ねた分だけ深まっていくのだと教えられます。

病気とともに生きるその姿は、私たちに「訪問看護として何ができるのか」という問いを、何度も投げかけてくださっています。

夜を越え、朝を迎える力を信じて

私たちは24時間対応の訪問看護ステーションではありません。 それは、「夜を支えない」ということではありません。

私たちが目指しているのは、誰かに頼り続けなければ夜を越えられないことではなく、その人自身が安心して夜を越え、朝を迎えられる力を、一緒に育んでいくことです。

もちろん、一人で頑張るという意味ではありません。困ったときには助けを求めながら、自分の力も信じられるようになること。その積み重ねが、その人らしい療養生活につながっていくと、私たちは信じています。

こうじさんは、そのことを私たちに教えてくださっている大切な存在です。限りあるいのちの時間を、これからどう生きていくのか。その問いに、これからも一緒に向き合い、一緒に考え、一緒に歩ませてください。

私たちは、これからもこうじさんとともに、夜を越え、安心して朝を迎える毎日を、育んでいきたいと思っています。